物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2022年4月時点)

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【東京圏】

・今期(22年4月)の空室率は3.0%で5四半期連続の上昇となり、2年9ヶ月ぶりに3%台に突入した。今期(22年2月~4月)は新規需要が68.0万㎡で比較的高い水準であったが、新規供給がそれを上回る82.2万㎡に達し、需給バランスはやや緩和した。
・東京圏の募集賃料は4,650円/坪で、前期の4,620円/坪から30円/坪(プラス0.6%)の上昇となった。東京圏の募集賃料は4四半期連続で上昇しているが、高値警戒感も強まりつつある。

【関西圏】

・今期(22年4月)の空室率は2.0%で、前期の1.5%から0.5ポイントの上昇となった。臨海部の一部物件で空室増がみられたが、総じて安定した需給動向である。
・関西圏の募集賃料は4,260円/坪で前期の4,160円/坪から100円/坪(プラス2.4%)の上昇となった。関西圏ではやや逼迫した需給環境を背景に賃料水準は上向いており、物流適地ではその傾向が特に顕著である。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2022年4月の東京圏の空室率は3.0%で5四半期連続の上昇となり、2年9ヶ月ぶりに3%台に突入した。今期(22年2月~4月)は新規需要が68.0万㎡で比較的高い水準であったが、新規供給がそれを上回る82.2万㎡に達し、需給バランスはやや緩和した。(図表1参照)。

具体的にみると三井不動産、月島機械による「MFLP市川塩浜Ⅱ」(*1) 、プロロジスによる「プロロジスパーク草加」 (*2)、三菱商事都市開発、SGリアルティによる「MCUD・SGリアルティ川崎」(*3) など計14棟が新たに竣工し、うち9棟が満室稼働となった。

今後の開発計画の発表も目白押しで、延床面積10万㎡を上回る開発計画では、日本GLPによる「GLP ALFALINK昭島」(*4)の開発 、ESRによる「ESR加須ディストリビューションセンター2」(*5)の着工 、三菱地所による「ロジクロス座間」(*6)の開発 が発表された。

東京圏では大量供給の影響により内陸部でリーシングに時間を要する物件が増え、臨海部の一部でも空室が散見される。市場競争力の高い開発物件のプレリーシングは概ね順調であるものの、引き続き高水準の新規供給が見込まれることから、これから空室率はさらに上昇する見通しである。

202204_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202204_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2022年3月31日付 月島機械(株)、三井不動産(株) プレスリリースより
2.2022年4月27日付 プロロジス プレスリリースより
3.2022年5月17日付 三菱商事都市開発(株)、SGリアルティ(株) プレスリリースより
4.2022年2月14日付 日本GLP(株) プレスリリースより
5.2022年3月10日付 ESR(株) プレスリリースより
6.2022年4月22日付 三菱地所(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2022年4月の東京圏の募集賃料は4,650円/坪で、前期の4,620円/坪から30円/坪(プラス0.6%)の上昇となった。東京圏の募集賃料は4四半期連続で上昇しているが、高値警戒感が強まりつつある。特に、人手の確保が難しいケースがある郊外の物流施設については、賃料上昇の勢いに乏しい。


202204_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2022年4月の関西圏の空室率は2.0%で、前期の1.5%から0.5ポイントの上昇となった。今期(22年2月~4月)は、オリックス不動産による「箕面ロジスティクスセンター」など計2棟が竣工し、臨海部の既存物件でのテナント退去もあり空室率がやや上昇したが、全般的には依然としてやや逼迫した需給環境が持続している(*7)。

今後の開発では、大和ハウス工業による「DPL兵庫川西」(*8)の着工 、三菱地所および東急不動産による京都府城陽市における「次世代基幹物流施設」(*9)の開発 、日本GLPによる「GLP八尾Ⅰ」(*10)の着工 、ESRによる「ESR川西ディストリビューションセンター」(*11)の開発 、三菱商事都市開発による大阪市平野区における開発用地(*12)の取得 、大和ハウス工業、CBREインベストメントマネジメント・ジャパン、大林組による「(仮称)神戸長田物流センター」(*13)の着工 、TC神鋼不動産による神戸市西区における開発用地(*14)の取得 が発表された。

関西圏では2022年の新規供給はテナントが確定したBTS型物流施設の竣工が多く、マルチテナント型物流施設もリーシングが概ね順調で、当面は安定した需給環境が見込まれる。なお、新名神高速道路「大津JCT~城陽JCT・IC」の区間が2024年度、「八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC」の区間が2027年度の供用開始予定で、これから新興の物流エリアが次々と誕生する見込みである。これらの地域では、物流施設開発の動きが水面下も含めて急増している。道路開通効果によるニーズ創出が期待される一方、供給時期の集中による一時的な需給緩和も懸念される。


202204_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202204_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

7.2021年11月29日に火災が発生したGLP舞洲Ⅱは、2022年2月28日付でテナントとの賃貸借契約が終了した(2022年3月9日付GLP投資法人プレスリリース)。したがって、本調査より集計対象外とした。
8.2022年2月1日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
9.2022年2月3日付 京都府、三菱地所(株)、東急不動産(株) プレスリリースより
10.2022年2月17日付 日本GLP(株) プレスリリースより
11.2022年3月1日付 ESR(株) プレスリリースより
12.2022年3月3日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより
13.2022年3月4日付 大和ハウス工業(株)、CBREインベストメントマネジメント・ジャパン(株)、(株)大林組 プレスリリースより
14.2022年3月16日付 TC神鋼不動産(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
2022年4月の関西圏の募集賃料は4,260円/坪で、前期の4,160円/坪から100円/坪(プラス2.4%)の上昇となった。関西圏ではやや逼迫した需給環境を背景に賃料水準は上向いており、物流適地ではその傾向が特に顕著である。

202204_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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