物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2023年10月時点)

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【東京圏】

・今期(23年10月)の空室率は6.4%で、前期の6.1%から0.3ポイントの上昇となった。今期(23年8月~10月)の新規供給は52.0万㎡と落ち着いた水準であったが、新規需要も40.5万㎡にとどまったため、需給緩和がさらに進んだ。
・東京圏の募集賃料は4,600円/坪で、前期の4,520円/坪から80円/坪(プラス1.8%)の上昇となった。東京圏の募集賃料は4,500~4,600円/坪のレンジで一進一退である。

【関西圏】

・今期(23年10月)の関西圏の空室率は3.7%で、前期の2.6%から1.1ポイントの上昇となった。今期(23年8月~10月)の新規供給が20.9万㎡に対し、新規需要は9.4万㎡に留まったため、空室率は再び上昇に転じた。
・関西圏の募集賃料は4,230円/坪で、前期の4,180円/坪から50円/坪(プラス1.2%)の上昇となった。建築コストの上昇を受け、募集賃料の設定でさらなる上昇を狙う動きがあるが、需給バランスが緩和局面に向かうなかで、リーシングで苦戦する物件が増加する懸念がある。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2023年10月の東京圏の空室率は6.4%で、前期の6.1%から0.3ポイントの上昇となった(図表1参照)。
今期(23年8月~10月)の新規供給は52.0万㎡と落ち着いた水準であったが、新規需要も40.5万㎡にとどまったため、需給緩和がさらに進んだ。

具体的にみると、ESRによる「ESR野田ディストリビューションセンター2」(*1) 、東急不動産による「LOGI’Q湾岸習志野」「LOGI’Q柏」(*2)、日本GLPによる「GLP平塚Ⅲ」(*3) など計12棟が新たに竣工し、うち5棟が満室稼働となった。

今後の開発計画では、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによる「LF谷田部」の着工(*4)、シーアールイーによる「ロジスクエア成田」「ロジスクエア草加Ⅱ」の着工(*5)、東京建物による「T-LOGI寒川」の着工(*6) 、プロロジスによる「プロロジスパーク八千代2」の着工(*7) 、ラサール不動産投資顧問による「東京東雲物流センター」の着工(*8) 、鹿島建設による「鹿島南六郷物流センター」の着工(*9) 、日本GLPによる「GLP所沢」「GLP八千代Ⅴ」の着工および「GLP習志野Ⅱ」の再開発(*10) 、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT越谷Ⅲ」の着工(*11)、三菱地所による「(仮称)厚木市上依知物流施設計画」の着工(*12)、ヒューリックによる千葉県成田市での開発(*13) などが相次いで発表された。

東京圏の空室率は2021年1月の0.2%を底に、3年近くわたり一貫して上昇している。そのため、賃貸マーケットでは募集中の物件が目立ち、リーシングに時間を要するケースが増えている。ディベロッパーも開発案件を厳選しはじめているものの、すでに着工済みで2024年に竣工を迎える物件はまだまだ多く、2024年の新規供給は300万㎡前後と引き続き高水準となる。新規供給が落ち着くのは2025年以降で、向こう一年は需給緩和局面が続く蓋然性が高い。

202310_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202310_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2023年9月1日付 ESR(株) プレスリリースより
2.2023年9月5日付 東急不動産(株) プレスリリースより
3.2023年9月5日付 日本GLP(株) プレスリリースより
4.2023年8月1日付 クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(株) プレスリリースより
5.2023年8月8日付、10月2日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
6.2023年8月31日付 東京建物(株) プレスリリースより
7.2023年9月7日付  プロロジス プレスリリースより
8.2023年9月20日付 ラサール不動産投資顧問(株) プレスリリースより
9.2023年9月21日付 鹿島建設(株) プレスリリースより
10.2023年9月25日, 10月4日, 9月25日付 日本GLP(株) プレスリリースより
11.2023年10月2日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより  
12.2023年10月27日付 三菱地所(株) プレスリリースより
13.2023年8月31日付 ヒューリック(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2023年10月の東京圏の募集賃料は4,600円/坪で、前期の4,520円/坪から80円/坪(プラス1.8%)の上昇となった。東京圏の募集賃料は4,500~4,600円/坪のレンジで一進一退である。これまでの物流施設の開発では汎用性が重視され、明確な個性を持たない物件が多かった。このような物件は需給緩和局面では、競合物件との差別化が難しく、リーシングも長期化しやすい面がある。他方、駅近や危険物倉庫の併設など、明確な強みを有する物件は、リーシングが順調に進みやすい傾向がみられる。


202310_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2023年10月の関西圏の空室率は3.7%で、前期の2.6%から1.1ポイントの上昇となった。今期(23年8月~10月)の新規供給が20.9万㎡に対し、新規需要は9.4万㎡に留まったため、空室率は再び上昇に転じた(図表4参照)。

具体的にみるとオリックス不動産による「京田辺ロジスティクスセンター」(*14) 、大和ハウス工業、CBREインベストメントマネジメント・ジャパン、大林組による「神戸長田物流センター(東棟)」(*15) 、日本GLPによる「GLP尼崎Ⅳ」(*16) などの計5棟が新たに竣工し、うち2棟が満室稼働となった。

今後の開発では、霞ヶ関キャピタルによる「LOGI FLAG COLD 大阪茨木Ⅰ」の着工(*17) 、三菱地所による「ロジクロス大阪住之江」の着工(*18) 、ESRによる「ESR 伊丹ディストリビューションセンター」の着工(*19) 、三菱商事都市開発による兵庫県加東市での開発用地取得(*20) が発表された。

これまでの関西圏での新規供給のピークは6年前の2017年で約130万㎡であった。2023年の新規供給は100万㎡前後と落ち着いた水準であったものの、この1年で需給緩和が進んだ。2024年も2023年と同水準の新規供給が見込まれることから、引き続き需給緩和が続く可能性が高い。なお、関西圏では2025年に竣工を迎える開発物件がすでに20物件以上あり、そのうち延床面積10万㎡以上のプロジェクトは7物件で、再来年は大量供給となりそうだ。そのうえ、2026年以降のプロジェクトも続々と発表されている。現下の関西圏の賃貸マーケットは安定しているが、先行きに留意すべき局面に徐々に入りつつある。


202310_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202310_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

14.2023年10月10日付 オリックス不動産(株) プレスリリースより
15.2023年11月10日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
16.2023年11月14日付 日本GLP(株) プレスリリースより
17.2023年9月15日付 霞ヶ関キャピタル(株) プレスリリースより
18.2023年10月3日付 三菱地所(株) プレスリリースより
19.2023年10月26日付 ESR(株) プレスリリースより
20.2023年8月31日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
2023年10月の関西圏の募集賃料は4,230円/坪で、前期の4,180円/坪から50円/坪(プラス1.2%)の上昇となった。建築コストの上昇を受け、募集賃料の設定でさらなる上昇を狙う動きがあるが、需給バランスが緩和局面に向かうなかで、リーシングで苦戦する物件が増加する懸念がある。

202310_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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