物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2023年7月時点)

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【東京圏】

・今期(23年7月)の空室率は6.2%で、前期の5.4%から0.8%の上昇となった。今期(23年5月~7月)の新規需要は101.7万㎡と堅調であったが、新規供給が過去最大の132.2万㎡となったため、空室増に歯止めがかかっていない。
・東京圏の募集賃料は4,520円/坪で、前期の4,600円/坪から80円/坪(マイナス1.7%)の下落となった。東京圏の募集賃料は4,500~4,700円/坪のレンジで一進一退である。

【関西圏】

・今期(23年7月)の関西圏の空室率は2.6%で、前期の3.0%から0.4ポイントの下落となった。今期(23年5月~7月)の新規供給は18.7万㎡に対し、新規需要が21.9万㎡で若干上回ったことから需給改善へと繋がった。
・関西圏の募集賃料は4,180円/坪で、前期の4,080円/坪から100円/坪(プラス2.5%)の上昇となった。関西圏では2022年7月の4,420円/坪をピークに下落傾向にあったが、今期はわずかに持ち直した。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2023年4月の東京圏の空室率は6.2%で、前期の5.4%から0.8%の上昇となった(図表1参照)。
今期(23年5月~7月)の新規需要は101.7万㎡で、調査開始以来で4番目のボリュームと堅調であったが、新規供給は132.2万㎡で過去最大となったこともあり、空室増に歯止めがかかっていない。

具体的にみると、プロロジスによる「プロロジスパーク古河4」(*1) 、日本GLPによる「GLP ALFALINK相模原2」「GLP ALFALINK 流山7」「GLP平塚Ⅱ」「GLP ALFALINK 流山4」(*2)、ESRによる「ESR加須ディストリビューションセンター2」(*3) など計26棟が新たに竣工し、うち11棟が満室稼働となった。

今後の開発計画では、三井物産都市開発による「(仮称)柏市風早 1 丁目物流センター計画」の着工 (*4)、大和ハウス工業による「DPL小田原」の着工 (*5)、日本自動車ターミナルによる「JMT板橋新 3・4・7 号棟(西棟)」の着工(*6) 、サンケイビルおよびJA三井リース建物による「SANKEILOGI府中」の着工(*7) 、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによる「LF境古河」の着工(*8) 、相鉄アーバンクリエイツおよびクレド‧アセットマネジメントによる「CREDO羽村」の開発(*9) 、プロロジスによる「プロロジスパーク古河6」の開発(*10) 、霞ヶ関キャピタルによる神奈川県川崎市での開発用地取得(*11) などが相次いで発表された。

東京圏では地域によって景況感が異なる。都県別で空室率を算出すると、茨城県は23.3%で20%を超え、神奈川県も7.9%とやや高いが、埼玉県は5.0%と概ね均衡した水準で、千葉県と東京都はそれぞれ3.4%と3.1%と低い水準である。圏央道の延伸で物流適地が増えた茨城県だが、開発ラッシュの影響で需給悪化が進み、埼玉県や神奈川県でも圏央道周辺では新規開発が集中しやすく、需給バランスは緩和傾向である。これから賃貸市況が後退に向かう過程で、エリア間の格差がさらに拡大しそうだ。

202307_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202307_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2023年5月18日付 プロロジス プレスリリースより
2.2023年6月8日付、6月16日付、7月3日付、7月4日付 日本GLP(株) プレスリリースより
3.2023年6月16日付 ESR(株) プレスリリースより
4.2023年5月23日付 三井物産都市開発(株) プレスリリースより
5.2023年6月14日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
6.2023年6月27日付 日本自動車ターミナル(株) プレスリリースより
7.2023年7月3日付  (株)サンケイビル プレスリリースより
8.2023年7月6日付 クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(株) プレスリリースより
9.2023年7月6日付 (株)相鉄アーバンクリエイツ、クレド‧アセットマネジメント(株) プレスリリースより
10.2023年7月20日付 プロロジス プレスリリースより
11.2023年7月31日付 霞ヶ関キャピタル(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2023年7月の東京圏の募集賃料は4,520円/坪で、前期の4,600円/坪から80円/坪(マイナス1.7%)の下落となった。東京圏の募集賃料は4,500~4,700円/坪のレンジで一進一退である。周知の通り、建設コストは上昇しており、開発物件の募集賃料は上昇する一方、既存物件の賃料設定は、空室増の影響もあり、従前からあまり変わっていない。


202307_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2023年7月の関西圏の空室率は2.6%で、前期の3.0%から0.4ポイントの下落となった。今期(23年5月~7月)の新規供給は18.7万㎡に対し、新規需要が21.9万㎡で若干上回ったことが需給改善に繋がった(図表4参照)。

具体的にみると住友商事およびSMFLみらいパートナーズによる「NEWNO‧SOSiLA高槻」(*12) 、キャピタランド・インベストメントによる「茨木彩都ロジスティクスセンター」(*13) などの計4棟が新たに竣工し、うち3棟が満室稼働となった。

今後の開発では、日本GLPによる「GLP 神戸住吉浜」の着工(*14) 、ESRによる「ESR川西ディストリビューションセンター」1期2棟の着工(*15) が発表された。

この数年、関西圏では安定した需給環境を背景に、ディベロッパーの動きが盛んであったが、物流エリアが広域化した影響で、大阪府泉南地区、兵庫県播磨地区、京都府や滋賀県での開発プロジェクトが多い。関西圏の主たる物流エリアでは空室が少ないが、これらの地域までニーズが波及するかが注目される。


202307_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202307_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

12.2023年5月31日付 住友商事(株)、 SMFLみらいパートナーズ(株) プレスリリースより
13.2023年7月3日付 キャピタランド・ジャパン(株) プレスリリースより
14.2023年7月31日付 日本GLP(株) プレスリリースより
15.2023年8月17日付 ESR(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
2023年7月の関西圏の募集賃料は4,180円/坪で、前期の4,080円/坪から100円/坪(プラス2.5%)の上昇となった。関西圏では2022年7月の4,420円/坪をピークに、募集賃料は下落傾向にあったが、需給改善の影響もあり、今期はわずかに持ち直した。

202307_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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