物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2023年4月時点)

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【東京圏】

・今期(23年4月)の空室率は5.4%で、前期の4.4%から1.0%の上昇となった。今期(23年2月~4月)の新規供給は103.7万㎡で大量供給が続く一方、新規需要は68.5万㎡と伸び悩み、需給ギャップが拡大している。
・東京圏の募集賃料は4,600円/坪で、前期の4,510円/坪から90円/坪(プラス2.0%)と上昇した。東京圏の募集賃料は4,500~4,700円/坪のレンジで一進一退である。

【関西圏】

・今期(23年4月)の関西圏の空室率は3.0%で、前期の2.4%から0.6ポイントの上昇となった。今期(23年2月~4月)の新規供給は32.6万㎡と落ち着いた水準であったが、新規需要は26.0万㎡に留まり、2四半期連続での空室率の上昇となった。
・関西圏の募集賃料は4,080円/坪で、前期の4,220円/坪から140円/坪(マイナス3.3%)の下落となった。関西圏では2022年7月の4,420円/坪をピークに3四半期連続での賃料下落である。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2023年4月の東京圏の空室率は5.4%で、前期の4.4%から1.0%の上昇となった(図表1参照)。
また、今期(23年2月~4月)の新規供給は103.7万㎡で大量供給が続く一方、新規需要は68.5万㎡と伸び悩み、需給ギャップが拡大している(*1)。

具体的にみると、プロロジスによる「プロロジスパークつくば3」および「プロロジスアーバン東京大田1」(*2) 、ESRによる「ESR東扇島ディストリビューションセンター」(*3)、大和ハウス工業による「DPL流山Ⅱ」(*4) など計17棟が新たに竣工し、うち8棟が満室稼働となった。

今後の開発計画では、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT厚木」の着工 (*5)、ラサール不動産投資顧問による「ロジポート多摩瑞穂」の着工 (*6)、シーアールイーによる「ロジスクエアふじみ野B」の着工、「ロジスクエア草加Ⅱ」および成田市での開発(*7) 、オリックス不動産による「つくばロジスティクスセンター」の着工(*8) 、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによる「LF加須」の着工(*9) 、東京建物による「T-LOGI鶴ヶ島」の開発(*10) 、グッドマングループによる成田国際空港隣接地での開発(*11) 、三井不動産による5物件の開発(*12) などが相次いで発表された。

倉庫・物流施設に対するニーズ自体は堅調であるが、それを上回る供給水準で、需給バランスの緩和が進んでいる。様々なテナントニーズに対応しやすい汎用的な賃貸物流施設は、この大量供給下で競合物件との差別化が難しく、募集賃料の高止まりもあり、リーシングが長引く傾向がみられる。他方、雇用面で有利な駅近物件、危険物倉庫併設、冷凍・冷蔵倉庫、重貨物対応など、商品設計に特色のある物流施設は、大量供給の影響が限定的で、リーシングが順調に進むケースが多い。需給緩和が進むこれからの局面では、競合物件との差別化戦略が注目される。

202304_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202304_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.今期(23年2月~23年4月)の新規供給に対する新規需要の割合は66%で、この5年間で最も低く、この10年間では2番目に低い水準で、大量供給に需要が追随しきれていない。
2.2023年2月21日付、3月10日付 プロロジス プレスリリースより
3.2023年4月6日付 ESR(株) プレスリリースより
4.2023年4月24日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
5.2023年2月2日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
6.2023年2月13日付 ラサール不動産投資顧問(株) プレスリリースより
7.2023年3月15日付、2月22日付、2月10日付  (株)シーアールイー プレスリリースより
8.2023年4月21日付 オリックス不動産(株) プレスリリースより
9.2023年4月28日付 クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(株) プレスリリースより
10.2023年2月1日付 東京建物(株) プレスリリースより
11.2023年3月16日付 グッドマンジャパン(株) プレスリリースより
12.2023年4月18日付 三井不動産(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2023年4月の東京圏の募集賃料は4,600円/坪で、前期の4,510円/坪から90円/坪(プラス2.0%)と上昇した。東京圏の募集賃料は4,500~4,700円/坪のレンジで一進一退である。建設コストの上昇で、新規開発物件では、高額での募集物件が増えているものの、コストプッシュ型のインフレで収益性が低下するテナントも多く、賃料上昇に追随できないケースが増えている。


202304_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2023年4月の関西圏の空室率は3.0%で、前期の2.4%から0.6ポイントの上昇となった。今期(23年2月~4月)の新規供給は32.6万㎡と落ち着いた水準であったが、新規需要は26.0万㎡に留まり、2四半期連続での空室率の上昇となった(図表4参照)。

具体的にみると日本GLPによる「GLP八尾Ⅰ」および「GLP八尾Ⅱ」(*13) 、三菱商事都市開発による「MCUD神戸西Ⅱ」(*14) などの計8棟が新たに竣工し、うち7棟が満室稼働となった。

今後の開発では、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT門真」の着工(*15) 、日本GLPによる「GLP ALFALINK茨木2」の着工および「GLP神戸住吉浜」の開発(*16) 、阪急阪神不動産による「ロジスタ大阪松原」および「ロジスタ豊中」の着工 (*17)、シーアールイーによる「ロジスクエア京田辺A」の着工(*18)、サンケイビルによる「(仮称)長岡京市物流計画」の開発(*19)、三井不動産による「MFLP尼崎Ⅰ」の開発(*20) が発表された。

関西圏では引き続き底堅い需要がみられるが、2023年は2017年に次ぐ大量供給となることから、今後も空室率が上昇する見通しである。


202304_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202304_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

13.2023年2月27日付、5月19日付 日本GLP(株) プレスリリースより
14.2023年3月31日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより
15.2023年2月2日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
16.2023年3月16日付、3月23日付 日本GLP(株) プレスリリースより
17.2023年3月23日付 阪急阪神不動産(株) プレスリリースより
18.2023年4月17日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
19.2023年4月13日付 (株)サンケイビル プレスリリースより
20.2023年4月18日付 三井不動産(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
2023年4月の関西圏の募集賃料は4,080円/坪で、前期の4,220円/坪から140円/坪(マイナス3.3%)の下落となった。関西圏では2022年7月の4,420円/坪をピークに3四半期連続での賃料下落である。

202304_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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