物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2023年1月時点)

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【東京圏】

・今期(23年1月)の空室率は4.4%で、前期の4.0%から0.4ポイントの上昇となった。今期(22年11月~23年1月)の新規需要は108.3万㎡と過去2番目のボリュームで堅調な需要が顕在化したが、新規供給が125.0万㎡と調査開始以来で最大となり、需給緩和がさらに進んだ。
・東京圏の募集賃料は4,510円/坪で、前期の4,700円/坪から190円/坪(マイナス4.0%)と、大きく下落した。コロナ禍のこの数年間、物流施設の賃料水準は上昇基調であったが、その局面は終わりつつあり、インフレによるテナント企業の収益性の低下もあり、賃料水準は弱含む懸念がある。

【関西圏】

・今期(23年1月)の関西圏の空室率は2.4%で、前期の1.6%から0.8ポイントの上昇となった。今期(22年11月~23年1月)の新規供給は18.5万㎡と落ち着いた水準で安定した需給環境を背景に、空室率は一進一退である。
・関西圏の募集賃料は4,220円/坪で、前期の4,300円/坪から80円/坪(マイナス1.9%)の下落となった。足元の需給環境は安定しているものの、今後の大量供給への懸念もあり、募集賃料は2四半期連続の下落である。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2023年1月の東京圏の空室率は4.4%で、前期の4.0%から0.4%の上昇となった(図表1参照)。

また、今期(22年11月~23年1月)の新規需要は108.3万㎡で、21年8月~10月の109.4万㎡に次ぐ過去2番目のボリュームで堅調な需要が顕在化したが、新規供給は125.0万㎡と調査開始以来で最大となり、空室率は8四半期連続の上昇となった。

具体的にみると、日本GLPによる「GLP八千代Ⅳ」および「GLP ALFALINK相模原4」(*1) 、シーアールイーによる「ロジスクエア白井」 (*2)、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT狭山」(*3) など計20棟が新たに竣工し、うち9棟が満室稼働となった。

今後の開発計画では、クレド‧アセットマネジメントによる「CREDO桶川伊奈」、「CREDO加須」の着工および「CREDO厚木」の開発 (*4)、プロロジスによる「プロロジスパーク古河5」の着工 (*5)、日本GLPによる「GLP狭山日高Ⅲ」および「GLP千葉北」の着工(*6) 、中央日本土地建物グループによる「LOGIWITH八王子」の着工(*7) 、三井不動産および日鉄興和不動産による「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」の着工(*8) 、シーアールイーによる「ロジスクエア朝霞」および「ロジスクエア久喜Ⅲ」の開発(*9) 、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによる「LF加須」の開発(*10) 、KIC ホールディングスによる「KIC春日部ディストリビューションセンター2」の開発(*11) などが相次いで発表された。

ポストコロナの局面でも引き続き堅調な需要は期待できるものの、2023年の新規供給は400万㎡前後と過去最大の大量供給が見込まれ、需給緩和がさらに進む。テナントである荷主・物流会社は、原油高や電気代の高騰などの物価高で収益が圧迫されるうえ、2024年問題に代表される人手不足にも取り組む必要があり、自動運転などの技術革新による構造変化にも対処していかなければならない。山積する課題の解決に資する高機能型物流施設には、引き続き強い引き合いが期待できる一方、差別化が難しい物件の一部は賃貸市況の後退に伴い、リーシング期間が長期化していくことが懸念される。

202301_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202301_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2022年11月7日付、11月22日付 日本GLP(株) プレスリリースより
2.2023年1月5日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
3.2023年1月18日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
4.2022年11月10日付、11月28日付、12月13日付 クレド‧アセットマネジメント(株) プレスリリースより
5.2022年12月21日付 プロロジス プレスリリースより
6.2023年1月17日付、1月30日付 日本GLP(株) プレスリリースより
7.2023年1月26日付 中央日本土地建物グループ(株) プレスリリースより
8.2023年1月26日付 三井不動産(株)、日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
9.2022年12月12日付、12月27日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
10.2023年1月16日付 クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(株) プレスリリースより
11.2023年1月31日付 KIC ホールディングス(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2023年1月の東京圏の募集賃料は4,510円/坪で、前期の4,700円/坪から190円/坪(マイナス4.0%)と、大きく下落した。コロナ禍のこの数年間、物流施設の賃料水準は上昇基調であったが、その局面は終わりつつあり、インフレによるテナント企業の収益性の低下もあり、賃料水準は弱含む懸念がある。


202301_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2023年1月の関西圏の空室率は2.4%で、前期の1.6%から0.8ポイントの上昇となった。今期(22年11月~23年1月)の新規供給は18.5万㎡と落ち着いた水準で安定した需給環境を背景に、空室率は一進一退である(図表4参照)。

具体的にみるとシーアールイーによる「ロジスクエア伊丹」および「ロジスクエア枚方」(*12) 、三菱地所による「ロジクロス大阪交野」(*13) などの計7棟が新たに竣工し、うち5棟が満室稼働となったが、新名神高速道路が横断する一部の地域ではリーシングに苦戦するケースがみられた。

今後の開発では、大和ハウス工業による「DPL東大阪」の着工(*14) 、日本GLPによる「GLP SJL堺」および「GLP ALFALINK 茨木1」の着工(*15) 、三菱地所による「大阪市住之江区柴谷冷凍冷蔵物流計画」の開発 (*16)、ロジランドによる「LOGI LAND 八尾」の開発(*17) が発表された。

2023年は関西圏でも大量供給で110万㎡を上回る新規供給が見込まれているが、この水準は2017年の新規供給を若干下回る。2017年当時は大量供給で需給悪化が急速に進み空室率は10%超となったが、現下の関西圏の賃貸市場では底堅い需要がみられる。新興の物流エリアの一部ではリーシングに苦戦するケースが散見されるが、物流適地では堅調な需要があることから、需給緩和のスピードは緩やかで、2023年も落ち着いた賃貸市況が続くことが見込まれる。


202301_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202301_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

12.2022年11月15日付、2023年1月20日付  (株)シーアールイー プレスリリースより
13.2022年11月30日付 三菱地所(株) プレスリリースより
14.2022年11月14日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
15.2022年12月9日付、2023年1月11日付 日本GLP(株) プレスリリースより
16.2022年11月30日付 三菱地所(株) プレスリリースより
17.2023年1月10日付 (株)ロジランド プレスリリースより


(2)賃料動向
2023年1月の関西圏の募集賃料は4,220円/坪で、前期の4,300円/坪から80円/坪(マイナス1.9%)の下落となった。関西圏では足元の需給環境は安定しているものの、今後の大量供給への懸念もあり、募集賃料は2四半期連続の下落である。

202301_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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