物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2020年7月時点)

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【東京圏】

・今期(20年7月)の空室率は0.4%で、調査開始以降の最低水準を2四半期連続で更新した。今期(20年5月~7月)の新規供給は39.0万㎡に対し、新規需要が48.8万㎡となり、5四半期連続で新規需要が新規供給を上回った。
・東京圏の募集賃料は4,400円/坪で、前期から横ばいであった。また、埼玉県に限定した募集賃料は4,070円/坪となり、2009年7月以来11年ぶりに4千円を上回った。

【関西圏】

・今期(20年7月)の空室率は3.0%で、前期の2.0%から1.0ポイントの上昇となった。超大型物件である「ESR尼崎ディストリビューションセンター」 を含む4棟が新たに竣工したが、空室率の上昇は小幅に留まった。
・関西圏の募集賃料は3,990円/坪となり、前期の3,850円/坪から140円/坪(プラス3.6%)の上昇となり、2008年7月の調査開始以降で最も高い水準に達した。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

 2020年7月の東京圏の空室率は0.4%となり、2008年7月からの調査開始以降の最低水準を2四半期連続で更新した(図表1参照)。今期(20年5月~7月)の新規供給は39.0万㎡に対し、新規需要が48.8万㎡となり、5四半期連続で新規需要が新規供給を上回った。
 具体的にみると、野村不動産と安田倉庫による「Landport東雲・安田倉庫」(*1)、三菱商事都市開発による「MCUD上尾」および「MCUD鶴ヶ島」(*2)、シーアールイーによる「ロジスクエア三芳」(*3)および「ロジスクエア狭山日高(飯能)」(*4)、東京建物による「T-LOGI久喜」(*5)ほか計7棟が新たに竣工し、うち5棟が満室稼働であった。
 今後の開発では、ロジランドによる「LOGI LAND 春日部Ⅰ」で大手運送会社との賃貸借契約の締結 、ESRによる「ESR茅ヶ崎ディストリビューションセンター」の着工 および「ESR横浜幸浦ディストリビューションセンター1」の着工(*8)、小田急不動産による千葉県船橋市での開発用地取得(*9)、プロロジスによる「プロロジスアーバン東京足立1,2」の開発(*10)、日本GLPによる「GLP ALFALINK相模原Ⅳ」の着工(*11)、伊藤忠商事と伊藤忠都市開発による「アイミッションズパーク吉川美南」の開発(*12)が相次ぎ発表された。
 また、Amazonは国内4ヶ所に物流拠点であるフルフィルメントセンターを開設することを発表したが(*13)、全て東京圏での開設予定である。コロナ禍での新しい生活様式や巣ごもり消費によってEコマースの業容拡大は顕著である。他方、荷主業界にはコロナ禍で厳しい業績に陥っているところも多いが、現時点では解約の動きはあまり拡がっていない。Eコマースを主に賃貸市況へのプラス面は色濃く出る一方、マイナス面は限定的であることから、当面は良好な賃貸市況が続く見通しである。

202007_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202007_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2020年6月1日付 野村不動産(株) プレスリリースより
2.2020年6月1日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより
3.2020年6月29日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
4.2020年6月30日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
5.2020年7月1日付 東京建物(株) プレスリリースより
6.2020年5月18日付 (株)ロジランド プレスリリースより
7.2020年6月1日付 ESR(株) プレスリリースより
8.2020年7月16日付 ESR(株) プレスリリースより
9.2020年6月3日付 小田急不動産(株) プレスリリースより
10.2020年7月1日付 プロロジス プレスリリースより
11.2020年7月6日付 日本GLP(株) プレスリリースより
12.2020年7月9日付 伊藤忠都市開発(株)、伊藤忠商事(株) プレスリリースより
13.2020年8月24日付 Amazon プレスリリースより


(2)賃料動向

 2020年年7月の東京圏の募集賃料は4,400円/坪で、前期から横ばいとなった。臨海部の需給バランスが逼迫するなか、内陸部への引き合いも堅調で、埼玉県に限定した募集賃料は4,070円/坪となり、2009年7月以来11年ぶりに4千円を上回った。

202007_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
 2020年7月の関西圏の空室率は3.0%で、前期の2.0%から1.0ポイントの上昇となった(図表4参照)。今期は超大型物件である「ESR尼崎ディストリビューションセンター」(*14)を含む4棟が新たに竣工したが、空室率の上昇は小幅に留まった。具体的にみると「ESR尼崎ディストリビューションセンター」は内定を含め約7割の入居率となったほか、阪急電鉄による「ロジスタ京都上鳥羽」(*15)など3棟が満室での竣工となった。
 今後の開発では、日本GLPによる「GLP尼崎Ⅲ」の着工(*16)、プロロジスによる「プロロジスパーク猪名川1・2」の着工(*17)、阪急阪神不動産と三菱地所による「ロジスタ・ロジクロス茨木彩都」の着工(*18)が発表された。
 今期(20年5月~7月)の新規供給と新規需要は過去2番目に高い水準であったが、最も高かったのは3年近く前の2017年8月~10月で、新規供給は68.8万㎡、新規需要は48.8万㎡であった(7ページのデータ集参照)。当時の空室率は13.0%で、需給バランスが最も悪化した時期と重なる。今期は大量供給であったが、内陸部だけでなく臨海部でも需給バランスは逼迫しつつあり、関西圏の賃貸市況は3年前と様変わりしている。


202007_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202007_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

14.2020年7月8日付 ESR(株) プレスリリースより
15.2020年8月3日付 阪急電鉄(株)、阪急阪神不動産(株) プレスリリースより
16.2020年5月14日付 日本GLP(株) プレスリリースより
17.2020年6月5日付 プロロジス プレスリリースより
18.2020年7月9日付 阪急阪神不動産(株)、三菱地所(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
 2020年7月の関西圏の募集賃料は3,990円/坪で、前期の3,850円/坪から140円/坪(プラス3.6%)の上昇となった。上述の通り関西圏の賃貸市況は良好で、募集賃料は2008年7月の調査開始以降で最も高い水準に達した。

202007_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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