物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2020年4月時点)

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【東京圏】

・今期(20年4月)の空室率は0.9%となり、2008年7月からの調査開始以降で最も低い水準となった。今期(20年2月~4月)の新規需要は101.1万㎡と高水準で、2四半期前の107.5万㎡に次ぐ過去2番目の新規需要となった。
・東京圏の募集賃料は4,400円/坪で、前期の4,370円/坪から30円/坪(プラス0.7%)の上昇となった。東京圏の募集賃料の上昇は3四半期連続で、特に外環道周辺など東京都心近郊の募集賃料が上向いている。

【関西圏】

・今期(20年4月)の空室率は2.0%で、前期の2.8%から0.8ポイントの低下となった。関西圏の需給バランスはこの2年間で緩和局面から逼迫局面へと急速に移行している。
・関西圏の募集賃料は3,850円/坪となり、前期の3,720円/坪から130円/坪(プラス3.5%)の上昇となった。関西圏の募集賃料は需給改善を背景に上向いており、この2年間で15%近く上昇している。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

 2020年4月の東京圏の空室率は0.9%となり、2008年7月からの調査開始以降で最も低い水準となった(図表1参照)。今期(20年2月~4月)の新規需要は101.1万㎡と高水準で、2四半期前の107.5万㎡に次ぐ過去2番目の新規需要となった。
 具体的にみると、日本GLPによる「GLP浦安Ⅱ」および「GLP八千代Ⅱ」(*1)、野村不動産による「Landport青梅Ⅱ」、「Landport厚木愛川町」および「Landport習志野」(*2)、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT越谷Ⅱ」(*3)、トーセイによる「T’s Logi橋本」(*4)、三井物産都市開発による「LOGIBASE市川」(*5)ほか計15棟が新たに竣工し、うち13棟が満室稼働であった。
 また、竣工前のリーシングでは、日本GLPによる「GLP ALFALINK相模原Ⅰ」で佐川急便、西濃運輸、ギオンとの賃貸借契約の締結(*6)および「GLP北本」で商社との賃貸借契約の締結(*7)、プロロジスによる「プロロジスパーク千葉2」で大手3PL企業との賃貸借契約の締結(*8)が発表された。また、今後の開発では、ESRによる「ESR川崎夜光ディストリビューションセンター」の着工および「ESR浮島ディストリビューションセンター」の開発(*9)、小田急不動産による千葉県印西市での開発用地取得(*10)、日本GLPによる「GLP ALFALINK相模原Ⅰ」、「GLP ALFALINK流山8」、「GLP北本」、「GLP常総」の着工(*11)、大和ハウス工業による「DPL浦和美園」の着工(*12)、日本自動車ターミナルによる「葛西トラックターミナルA棟」の着工(*13)、ロジランドによる「LOGILAND加須」の着工(*14)、プロロジスによる「プロロジスパーク海老名2」の着工と「プロロジスパーク八千代」の開発(*15)、ラサール不動産投資顧問とNIPPOによる「ロジポート加須」の着工(*16)が相次ぎ発表された。
 なお、本調査は大規模物件が対象で、物流拠点の整備計画は短期ではなく中長期で計画され、数ヶ月から1年ほど前にすでに意思決定されているものがメインである。したがって、今期の需給改善はコロナ禍による需要増ではなく、従来から続く堅調な需要がこの情勢下でも、当初の見込み通りに顕在化していると判断している。

202001_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202001_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2020年3月10日付、4月9日付 日本GLP(株) プレスリリースより
2.2020年4月1日付 野村不動産(株) プレスリリースより
3.2020年4月1日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
4.2020年4月24日付 トーセイ(株) プレスリリースより
5.2020年5月1日付 三井物産都市開発(株) プレスリリースより
6.2020年2月10日付 日本GLP(株) プレスリリースより
7.2020年4月21日付 日本GLP(株) プレスリリースより
8.2020年4月9日付 プロロジス プレスリリースより
9.2020年2月3日付、3月31日付 ESR(株) プレスリリースより

10.2020年2月7日付 小田急不動産(株) プレスリリースより

11.2020年2月10日付、2月25日付、4月21日付、4月22日付 日本GLP(株) プレスリリースより

12.2020年2月27日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより

13.2020年3月17日付 日本自動車ターミナル(株) プレスリリースより

14.2020年3月24日付 (株)ロジランド プレスリリースより

15.2020年3月26日付、4月9日付 プロロジス プレスリリースより

16.2020年4月21日付 ラサール不動産投資顧問(株)、(株)NIPPO プレスリリースより


(2)賃料動向

 2020年4月の東京圏の募集賃料は4,400円/坪で、前期の4,370円/坪から30円/坪(プラス0.7%)の上昇となった。東京圏の募集賃料の上昇は3四半期連続で、特に外環道周辺など東京都心近郊の募集賃料が上向いている。

202001_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
 2020年4月の関西圏の空室率は2.0%で、前期の2.8%から0.8ポイントの低下となった(図表4参照)。関西圏の需給バランスはこの2年間で緩和局面から逼迫局面へと急速に移行している。
 具体的にみると、今期(20年2月~4月)は、泉北高速鉄道による「北大阪トラックターミナル1号棟」(*17)、シーアールイーによる「ロジスクエア神戸西」(*18)など3棟が満室での竣工となった。
 今後の開発では、三井物産都市開発による「LOGIBASE久御山」の着工(*19)、オリックスによる「箕面ロジスティクスセンター」の開発(*20)、伊藤忠都市開発および伊藤忠商事による「(仮称)箕面森町物流施設」の開発(*21)、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT尼崎Ⅳ」の開発(*22)が相次ぎ発表された。関西圏では2020年6月末のESR尼崎ディストリビューションセンターの竣工により空室率が一時的に上昇することが見込まれるが、大勢に大きな影響はなく、今後も安定した需給環境が続く見通しである。


202001_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202001_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

17.2020年3月27日付 泉北高速鉄道(株) プレスリリースより
18.2020年4月30日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
19.2020年2月3日付 三井物産都市開発(株) プレスリリースより
20.2020年2月27日付 オリックス不動産(株) プレスリリースより
21.2020年3月10日付 伊藤忠都市開発(株) プレスリリースより
22.2020年4月24日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
 2020年4月の関西圏の募集賃料は3,850円/坪で、前期の3,720円/坪から130円/坪(プラス3.5%)の上昇となった。関西圏の募集賃料は需給改善を背景に上向いており、この2年間で15%近く上昇している。

202001_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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3. 追記事項 ~新型コロナウィルスの影響~

 2020年5月25日に新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全国で解除され、事業環境も正常化に向かっている。弊社では2月28日付の調査レポートにて「3. 追記事項~新型コロナウイルスの影響」 についてコメントし、5月8日付の調査レポートでもコロナ禍を踏まえた「物流施設の賃貸マーケットに関する短期予測」 を発表したが、本レポートでも新型コロナウイルスによる賃貸市況への影響を追記する。

 上述の通り、東京圏、関西圏とも賃貸市況は良好である。今期(20年2月~4月)に竣工した物流施設はBTS型が比較的多く、マルチテナント型でも新型コロナウイルス感染症の流行前にプレリーシングが終了していたものが大半である。そもそも不動産市況は経済変動に対して遅効性があるため、コロナ禍による不動産マーケットへの影響が出てくるのはこれからで、具体的に数値になって現れてくるのは半年ほど先だろう。

 コロナ禍による不動産市況への影響は、巣ごもり消費によるEコマースの拡大に焦点が当たっているが、新しい生活様式への移行が物流施設の需要拡大につながるのは間違いない。他方、物流会社の取引先である荷主業界は好不況さまざまで、過去例をみない貨物量の落ち込みに見舞われている企業もあり、7割経済とも言われる景気悪化が不動産市況にマイナスの影響を与える側面は確実にある。したがって、物流施設の不動産マーケットは、プラス面とマイナス面がせめぎ合う形となり、弊社ではプラス面がやや優勢ではないかと予想している。

 また、コロナ禍では業種・業態による業績の格差が拡大しやすい。居酒屋などの飲食店、紳士服などのアパレルなど構造不況に陥ってしまった業種・業態も増えている。これまで物流施設の開発用地は、工場跡地と農地転用(土地区画整理事業)が二大供給源であったが、今後は構造不況となった各種業態から物流施設へ転用する動きが増えることが見込まれる。コロナ禍以前から物流施設の開発を前提に、商業施設を取得する動きが若干みられたが、この流れは加速しそうだ。

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