物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2017年1月時点)

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【東京圏】

今期(17年1月)の空室率は4.9%となり、前期の5.0%から0.1ポイント低下した。今期の新規供給は17.7万㎡に対し、新規需要は18.4万㎡で、概ね均衡した需給バランスとなった。
東京圏の募集賃料は4,170円/坪で、前期の4,140円/坪から30円/坪(プラス0.7%)の僅かな上昇となった。

【関西圏】

今期(17年1月)の空室率は5.9%となり、前期の4.5%から1.4ポイント上昇した。今期の新規供給は11.1万㎡となり前期から大幅に減少したが、新規需要も4.9万㎡と伸び悩んだため、関西圏の空室率は3四半期連続の上昇となった。
関西圏の募集賃料は3,450円/坪となり、前期の3,470円/坪から20円/坪(マイナス0.6%)の下落となった。

東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

 2017年1月の東京圏の空室率は4.9%となり、前期(16年10月)の5.0%から0.1ポイント低下した
(図表1参照)。今期(16年11月~17年1月)の新規供給は17.7万㎡に対し、新規需要は18.4万㎡で、概ね均衡した需給バランスとなった(図表2参照)。

 具体的にみると、プロロジスによるスズケン専用施設の「プロロジスパーク古河1」(*1)、三菱商事都市開発による三菱商事ロジスティクス専用施設の「MCUD川崎Ⅱ」(*2)、GLPによる「GLP柏Ⅱ」(*3)など、計6棟が新たに竣工した。また2016年上半期に竣工した物件で稼働率の上昇が相次ぐなど、引き続き底堅い需要が確認され、比較的安定した需給環境となった。

 今後の開発計画の発表も相次いでいる。シーアールイーは埼玉県上尾市で物流施設開発用地を取得(*4)、野村不動産と野村不動産投資顧問は商業施設から物流施設への建替えとなる「Landport東習志野」の計画概要(*5)、野村不動産は敷地面積で約12万㎡となる東芝青梅事業所の土地に関する売買契約を締結(*6)、GLPは総延床面積で約65.5万㎡にも及ぶ「GLP相模原プロジェクト」の開発(*7)、ESRは千葉県市川市の官舎跡地で延床面積22.9万㎡となる「ESR市川ディストリビューションセンター」の開発計画(*8)、ラサール不動産投資顧問は国内大手食品卸会社専用施設として「平塚東八幡物流センター」の着工(*9)をそれぞれ発表した。また、三菱ふそうトラック・バスは大和ハウス工業と敷地面積で約10万㎡となる川崎工場第二敷地の土地に関する売買契約を締結したことを発表した(*10)。そのほか千葉県流山市では、既にGLPによる「GLP流山I,II,III」、大和ハウス工業による「DPL流山(計3棟)」、流山市平方地区共同開発(同第2,同第3)による物流施設計画が発表されているが、そのほかにも物流施設建設を目的とした大規模な土地取引が確認されている。「GLP相模原プロジェクト」を筆頭に、各開発計画が巨大化しており、複数棟で構成される物流団地が次々と誕生する見通しである。


201610_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

201610_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2016年11月4日付 プロロジス プレスリリースより
2.2017年1月25日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより
3.2017年2月3日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより
4.2016年12月15日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
5.2016年12月20日付 野村不動産ホールディングス(株) プレスリリースより
6.2016年12月20日付 (株)東芝 プレスリリースより
7.2016年12月27日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより
8.2017年1月20日付 ESR プレスリリースより
9.2017年1月30日付 ラサール不動産投資顧問(株) プレスリリースより
10.2017年2月22日付 三菱ふそうトラック・バス(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2017年1月の東京圏の募集賃料は4,170円/坪で、前期の4,140円/坪から30円/坪(プラス0.7%)の僅かな上昇となった。リーシング期間が長期化している一部の物件では募集賃料を引き下げる動きがみられるが、全般的な賃料動向は安定的に推移している。この数年は堅調な需要に加え、建設コストの高まりもあって、物流施設の賃料水準は緩やかに上向いていたが、今後は開発計画が相次ぐことを考慮すると、更なる上昇は期待しづらい。他方、物流業界は人手不足が深刻であるため、雇用確保の面で優位性がある物件に関しては、今後も十分な引き合いは期待できる。物件による市場競争力の格差は拡大傾向にある。

201610_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

 2017年1月の関西圏の空室率は5.9%となり、前期の4.5%から1.4ポイント上昇となった(図表4参照)。今期(16年11月~17年1月)の新規供給は11.1万㎡となり前期の32.9万㎡から大幅に減少したが、新規需要も4.9万㎡と伸び悩んだ。そのため関西圏の空室率は3四半期連続の上昇となり、需給緩和が更に進んでいる(図表5参照)。

 今後の開発では泉北高速鉄道が「北大阪トラックターミナル新棟計画」を発表している(*11)。北大阪トラックターミナルは、大阪府などが出資する大阪府都市開発(*12)によって1974年に供用開始されたトラックターミナルで、その一部の建替えとなる。一般的にトラックターミナルは交通の要衝に位置し、物流立地としてのポテンシャルが非常に高く、北大阪トラックターミナルも同様である。また、新たに開発されるトラックターミナルは、公共トラックターミナルと保管・流通加工を担う配送センターの機能を併せ持つ施設で、平屋建が一般的なトラックターミナルに比べて床面積が大幅に増える。東京都内のトラックターミナルでも大規模な高機能型物流施設への建替え計画があり、大都市圏ではトラックターミナルの高層化が次々と進むことが期待される。


201610_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

201610_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス

11.2017年1月19日付 泉北高速鉄道(株) プレスリリースより。
12.2014年に南海電気鉄道(株)が大阪府などから株式を取得して、社名を大阪府都市開発(株)から泉北高速鉄道(株)に変更した。


(2)賃料動向

 2017年1月の関西圏の募集賃料は3,450円/坪で、前期の3,470円/坪から20円/坪(マイナス0.6%)の下落となった。
周知のとおり、関西圏では大量供給時期に突入し、空室率も上昇し始めている。今後も需給緩和が更に進み、関西圏全体の賃料動向は弱含みで推移する見通しである。
なお、関西圏でも労働力が確保しやすいなど、その他物件と差別化が可能な物件では底堅い引き合いが期待でき、今後の賃料動向は物件間の格差が拡大すると考えられる。

201607_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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