【不動産価格の見通し】
「上昇」が75.0%、「横ばい」が25.0%、「下落」の回答者はゼロとなった。4分の3の回答者が不動産価格の更なる上昇を予想しており、依然として強気の見通しが支配的である。
【賃料水準の見通し】
「上昇」(55.4%)で、調査開始以降で最大の構成比となった。賃料水準でも強気の見通しが支配的であるが、その見通しに異を唱える回答も若干増加している。
1.物流施設の不動産価格の見通し
物流施設の不動産価格について半年後の見通しを設問した(図表1参照)。本調査(15年1月)では「上昇」が75.0%、「横ばい」が25.0%、「下落」が0%となり、4分の3の回答者が不動産価格の更なる上昇を予想している。「上昇」の構成比は、2年半前の2012年7月に69.2%まで急上昇し、その後は強気の見通しが支配的で、本調査でもその傾向に大きな変化はみられない。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注1:Nは回答者数(サンプル数)を示す。
注2:2008年1月から2012年7月までの設問対象は「土地価格」で、2013年1月より「不動産価格」に変更している。
詳細は2013年3月4日発表の弊社レポート(http://www.ichigo-re.co.jp/909/)を参照。
半年後の物流施設の不動産価格の見通しについて、それぞれの理由を確認する(図表2参照)。
上昇理由では「投資家層の拡がりから、物流施設への不動産投資が更に活発になるため」が54回答と最多となり、「資金調達環境が良好なため」が38回答、「建設コストが上昇するため」が27回答となっている。上昇理由の上位3つは前アンケートと同様であるが、「建設コストが上昇するため」は前回の37回答から減少している点が特徴的である。そのほかの選択肢では「投資対象となる高機能型物流施設の絶対数が少ないため」が19回答、「物流施設の賃料水準が上昇するため」が16回答、「日本経済の安定的な成長が期待できるため」が8回答となっている。自由記入欄の「その他」では、売り物件の乏しさによる取得競争の激しさを示唆する意見が複数みられた。
横ばいの理由では「不動産価格が上昇局面から踊り場にさしかかるため」が13回答、「賃料水準の見通しに大きな変化がないため」が10回答で、前アンケートと概ね同傾向である。また「投資市場の過熱感から、投資を控えるプレイヤーが増えるため」が6回答、「金利の見通しに大きな変化がないため」が3回答となっている。不動産価格の上昇期間が長期に及び、更なる上昇余地が乏しいことや局面変化を予想する意見が中心である。なお、下落の回答者はいなかった。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:複数回答可で設問。また、左軸上の文章は、読みやすくするため、一部省略している。文章(全文)は、PDF末尾の回答用紙を参照。
2.物流施設の賃料水準の見通し
次に、物流施設の賃料水準について半年後の見通しを設問した(図表3参照)。
本調査(15年1月)では「上昇」が55.4%となり、調査開始以降で最大の構成比となった。また「横ばい」は42.4%、「下落」は2.2%となった。前アンケートでは「下落」の回答者がいなかったが、本調査では複数名が「下落」を選択し、構成比は2.2%まで上昇している。賃料水準でも強気の見通しが支配的であるが、その見通しに異を唱える回答も若干増加している。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nは回答者数(サンプル数)を示す。
半年後の賃料水準の見通しについて、それぞれの理由を確認する(図表4参照)。
上昇理由では「土地価格や建設費などの開発コストが上昇し、その分の賃料転嫁が進むため」が36回答で最多となり、「老朽化した保管型倉庫から高機能な物流施設に移転するケースが増えるため」が19回答となっている。また、「ネット通販が需要を更に牽引するため」が18回答で、前アンケートの25回答から減少している。需要の牽引役としてのネット通販は、存在感がやや低下しているようだ。そのほか、「高機能な大型物流施設の大量供給によって、潜在的な需要が喚起されるため」が14回答、「飲食料品・日用雑貨・医薬品など幅広い業種で需要拡大が期待できるため」が13回答である。なお、「原油安によって物流会社の収益が改善し、賃料負担力が増すため」は5回答と少なかった。
横ばいの理由は「荷主・物流会社の賃料負担力に変化がないため」が27回答で最多となり、「新規開発による供給増と物流ニーズの増加が均衡するため」が16回答、「物流業界に大きな変化がなく、安定しているため」と「物価動向に目立った変化はみられないため」がそれぞれ9回答であった。前アンケートと回答傾向は概ね一致しており、物流セクターの特徴のひとつである安定性に加え、物流施設の需給バランスが均衡していることが横ばいの主な理由となっている。
下落の理由としては「物流施設の大量供給で、テナントの獲得競争が激化するため」と「高機能な物流施設の大量供給で、大型物件の希少性が薄れるため」がそれぞれ2回答、「人件費の上昇で物流会社の利益が圧迫され、賃料の値下げ圧力が強まるため」が1回答であった。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:複数回答可で設問。また、左軸上の文章は、読みやすくするため、一部省略している。文章(全文)は、PDF末尾の回答用紙を参照。
3.業況判断DI
不動産市況のサイクルのうち、本調査時点がどの段階にあるかを認識することを主眼として、日銀短観のように、不動産価格と賃料水準について業況判断DIを算出した(図表5参照)。
本調査(15年1月)における不動産価格の業況判断DIは75.0ポイントで、前回(14年7月)の74.3ポイントから僅かに上昇した。他方、賃料水準の業況判断DIは53.3ポイントで、不動産価格と同様に、前回から僅かに上昇した。不動産価格、賃料水準とも業況判断DIは前回と比べて若干上昇しているが、全般的な傾向としては大きな変化はみられない。不動産投資マーケットの過熱感を指摘する声はあるものの、市場関係者の大勢は不動産価格、賃料とも先行きについて強気である。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
作成方法:日銀短観の業況判断D.I.を参考に、下式にて算出。
業況判断D.I.=「上昇」の回答者構成比-「下落」の回答者構成比
4.原油安による不動産市況への影響
2014年上半期には1バレル100ドル超の原油価格であったが、2015年1月に1バレル50ドルを下回り半値以下にまで急落した。原油価格は既に底入れしたようで直近では上昇に転じているが、店頭のガソリン価格は下落傾向で、物流業界は原油安のメリットを享受できる事業環境下にある。そこで、本アンケートでは原油安による不動産市況への影響を設問した。
「目立った影響はない」は53回答と最多で、回答者の6割弱が選択している。原油安による収益改善は期待できるが人件費の増加で相殺され、原油安による不動産市況への影響は限定的であるとの意見が多かった。また、原油安の持続性は不透明であり、長期的な戦略が必要な不動産への影響は限定的との意見もあった。
そのほかの選択肢では「物流会社の収益が改善し、テナントサイドの賃料負担力が増す」が22回答、「物流会社の収益が改善し、拠点開設などの新規ニーズが増える」が10回答で、原油安が不動産市況にポジティブな影響をもたらすとの意見も一定数みられた。また「輸送コストの低下により、物流立地の広域化が進む」が6回答、不動産市況へのネガティブな影響を示唆する「デフレ経済に回帰し、賃料の値下げ圧力が強まる」は3回答と少なかった。
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:複数回答可で設問。また、左軸上の文章は、読みやすくするため、一部省略している。文章(全文)は、PDF末尾の回答用紙を参照。
■アンケート調査の概要、回答用紙につきましては、PDF末尾をご参照ください。