物流施設の賃貸マーケットに関する短期予測 2014年版

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【東京圏】

東京圏の需給バランスは2013年より新規供給が新規需要を上回る局面に移行しており、その傾向はしばらく続く。向こう2年間の需給バランスは徐々に緩和し、空室率は2016年7月に6.4%まで上昇する見通しである。東京圏の賃料水準は直近(2014年7月)の3,990円/坪から、2年後の2016年7月には4,040円/坪まで緩やかに上昇する見通しである。

【大阪圏】

大阪圏における2014年の新規供給と新規需要は、ともに40万㎡を突破し2007年以来の大量供給時代に突入する。空室率は緩やかに上昇に向かうが2年後の2016年7月で3.3%に留まる見通しである。大阪圏の賃料水準は直近(2014年7月)の3,300円/坪から、2年後の2016年7月には3,440円/坪となり、着実に上昇する見通しである。

はじめに

 弊社では「物流施設の賃貸マーケットに関する短期予測」を毎年発表しているが、本年も短期予測を実施し、その概要を発表する。なお、本予測において変更点が二つある。ひとつは大阪圏で新規開発が盛んであることを鑑み、大阪圏でも同予測を実施する。もうひとつは、物価動向がデフレからインフレへ転換したことを考慮し、賃料モデルを見直す。

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1.東京圏の短期予測の概要

① 需給バランスの予測

 東京圏の需給バランスは「新規供給が新規需要を上回る時期(薄青面)」と「新規需要が新規供給を上回る時期(薄赤面)」を繰り返し、2013年より新規供給が新規需要を上回る局面に移行している。2014年も新規供給が新規需要を上回る見通しで、2015年も新規供給が過去最大の164.3万㎡に達することを考慮すると東京圏の需給バランスは更に緩和しそうだ。2016年は上半期のみの集計であるが、確定的な新規供給だけで40万㎡を突破しており、現在の開発動向を考慮すると、2016年も新規供給が新規需要を上回る局面が続く見通しである。



図表1.1 東京圏の需給バランスの予測結果
図表1.1 東京圏の需給バランスの予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:暦年の需給データは四半期データから算出している。そのため、当年2月~翌年1月までの合計値である。なお、2016年上半期は6ヶ月(2016年2月~7月)の集計である。


 図表1.2は東京圏の空室率の予測結果である。図表1.1.に示す通り2014年の新規供給は、2013年に比べて低水準に留まるため需給環境も概ね安定的な見通しである。2015年より需給環境が徐々に緩和し、東京圏の空室率は1年後の2015年7月に4.4%、2年後の2016年7月に6.4%まで上昇する見通しである。なお、テナントが利用中の面積を示す賃貸面積(薄赤面)は順調に拡大し、直近(2014年7月)の875.6万㎡から2年後の2016年7月には1,098.4万㎡となり、東京圏の賃貸面積は1千万㎡を突破する見通しである。



図表1.2 東京圏の空室率の予測結果
図表1.2 東京圏の空室率の予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス


② 賃料水準の予測

 弊社にて四半期毎に公表している募集賃料は、募集情報を収集しその中央値を算出している。算出過程でインフレの調整は行っておらず、名目ベースの賃料履歴といえる。そのため、物価情勢がデフレからインフレへ転換すれば、名目ベースの賃料水準への影響は多大である。今後の物価情勢に関しては、各機関から様々な見通しが発表されているが、本レポートでは日本銀行発表の物価展望を採用したうえで、賃料水準の予測を実施する(*1) 。

 図表1.3の赤実線は、今後の物価展望を考慮した名目ベースの賃料水準である。東京圏の賃料水準は、直近(2014年7月)の3,990円から緩やかな上昇が続く見通しで、1年後の2015年7月に4,030円/坪、2年後の2016年7月に4,040円/坪に達する予測結果である。なお、参考情報として、物価変動率を0%(ゼロインフレ)と仮定した場合の名目賃料(薄赤点線)の推移も併せて図示する。



図表1.3 東京圏の賃料水準の予測結果
図表1.3 東京圏の賃料水準の予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.日本銀行発表の経済・物価情勢の展望(2014年4月)において、2013~2016年度の政策委員の大勢見通しが示されている。消費者物価指数(全国、生鮮食品を除く総合、前年度比)のうち、消費税率引き上げの影響の除くケースにおける政策委員見通しの中央値を採用する。2014年度はプラス1.3%、2015年度はプラス1.9%、2016年度はプラス2.1%である。

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2.大阪圏の短期予測の概要

① 需給バランスの予測

 大阪圏の不動産マーケットは活況期と低迷期を区分しやすく、2006年と2007年が活況期に該当する。2008年から2012年頃までは新たな動きが乏しく長く低迷期が続いたが、ここにきて再び活況を呈している。2014年は新規供給、新規需要とも40万㎡を突破する見込みで、2007年以来の大量供給時代に突入する。2015年は新規需要、新規供給とも30万㎡弱でやや落ち着くが、2016年には新規供給が再び増加しそうだ。2016年は上半期のみの集計で30万㎡強の新規供給が見込まれ、下半期も含めた通年では60万㎡にまで到達する勢いがある。



図表2.1 大阪圏の需給バランスの予測結果
図表2.1 大阪圏の需給バランスの予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:暦年の需給データは四半期データから算出している。そのため、当年2月~翌年1月までの合計値である。なお、2016年上半期は6ヶ月(2016年2月~7月)の集計である。


 図表2.2は大阪圏の空室率の予測結果である。2014年下半期から2015年上半期にかけて一定水準の新規供給が見込まれるが、新規需要も堅調で1年後の2015年7月の空室率は1.3%と低水準に留まる。2016年以降はマルチテナント型物流施設の新規供給が相次ぎ、2年後の2016年7月の空室率は3.3%まで上昇する見通しである。なお、テナントが利用中の面積を示す賃貸面積(薄赤面)は直近(2014年7月)の264.6万㎡から2年後の2016年7月には341.0万㎡と300万㎡を突破し、東京圏と同様に順調に拡大する見通しである。



図表2.2 大阪圏の空室率の予測結果
図表2.2 大阪圏の空室率の予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス


② 賃料水準の予測

 東京圏と同手法で大阪圏の賃料水準の予測をする。図表2.3の赤実線は、今後の物価展望を考慮した名目ベースの賃料水準である。

 大阪圏の賃料水準は直近(2014年7月)の3,300円から、1年後の2015年7月に3,370円/坪、2年後の2016年7月には3,440円/坪となり、名目賃料は着実に上昇する見通しとなる。なお、参考情報として、物価変動率を0%(ゼロインフレ)と仮定した場合の名目賃料(薄赤点線)の推移も示す。



図表2.3 大阪圏の賃料水準の予測結果
図表2.3 大阪圏の賃料水準の予測結果

出所:株式会社一五不動産情報サービス

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