物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2014年1月時点)

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【東京圏】

空室率は2.7%となり、前期から横ばい。3四半期連続の大量供給となったが、旺盛な需要に支えられ均衡した需給動向。また、今期の募集賃料は3,990円/坪で、安定した需給環境を背景に、募集賃料も概ね横ばい。

【大阪圏】

空室率は0.5%となり、前期の0.7%から0.2ポイント改善。大阪圏では逼迫した需給環境を背景に、新規開発の動きが活発。また、今期の募集賃料は3,210円/坪となり、前期から若干の上昇。

東京圏の賃貸マーケット動向


(1)需給動向

 2014年1月の東京圏の空室率は2.7%となり、前期(13年10月)から横ばいであった(図表1参照)。今期(13年11月~14年1月)の新規供給は36.6万㎡で3四半期連続の大量供給となったが、旺盛な需要に支えられ均衡した需給動向となった(図表2参照)。

 今期はマルチテナント型物流施設の新規稼働が相次いだ。千葉県下で「SGリアルティ柏B棟」が新規稼働し、SGホールディングスグループの佐川グローバルロジスティクス(*1)などが入居した。また2014年1月に「GLP・MFLP市川塩浜」が竣工し、楽天が1,2階に入居することが発表された(*2)。神奈川県下では「DPL相模原」と「GLP厚木」が新規稼働し、「DPL相模原」には日立物流(*3)などが入居し、「GLP厚木」にはバンテックおよび澁澤倉庫が入居することが発表された(*4)。そのほか2015年4月竣工予定の「GLP綾瀬」も日本ロジテムが一括で利用することが発表された(*5)。新規稼働物件のリーシングは概ね順調で、既存施設でも稼働率の改善がみられたことが安定した需給バランスに繋がった。新規需要を荷主(*6)ベースでみると、精密機器、化粧品、日用雑貨、家具、ネット通販など、幅広い業種から需要が発生しており、これらのニーズの受け皿として高機能型物流施設が選定されている。なお、2014年以降も新規開発が相次ぐ見込みで、プロロジスは「プロロジスパーク常総」(*7)、GLPは「GLP狭山日高Ⅰ・Ⅱ」(*8)と「GLP八千代」(*9)の開発計画を発表した。

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出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2014年1月21日付 SGホールディングス(株)プレスリリースより。なお、利用面積は約2.5万㎡である。
2.2014年1月27日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)および三井不動産(株)プレスリリースより。
3.2013年12月25日付 (株)日立物流 プレスリリースより。なお、利用面積は約4.1万㎡である。
4.2014年1月22日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)プレスリリースより。なお、利用面積は(株)バンテックが約3万㎡、澁澤倉庫(株)が約1.4万㎡である。
5.2014年2月4日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)プレスリリースより。
6.荷主とは、物流センターで取り扱う荷物の所有者で、物流会社に業務を委託した事業者を指す。賃貸物流施設では、物流会社がテナントであるケースが比較的多いが、物流会社の顧客である荷主の意向が物流ニーズに大きく影響する。
7.2013年12月18日付 プロロジス プレスリリースより。
8.2014年1月9日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)プレスリリースより。
9.2014年1月16日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)プレスリリースより。


(2)賃料動向

 2014年1月の東京圏の募集賃料は3,990円/坪で、前期の4,000円/坪から10円/坪(マイナス0.3%)の下落となった(図表3参照)。安定した需給動向を背景に、募集賃料の中央値(黒字)は概ね横ばいであった。一方、募集サンプルの上位10%(赤字)は、2013年1月の5,470円/坪を底に、4四半期連続で上昇し、直近の2014年1月時点で6,190円/坪まで上昇している。
 募集賃料は、テナントの入居を待つ空室在庫の賃料を示す指標であり、人気薄で割安な賃貸物件がサンプル内に滞留するため、中央値ベースの募集賃料では大きな変化はないが、市場競争力のある一部の賃貸物件では強気の賃料設定もみられるようになっている。

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出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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大阪圏の賃貸マーケット動向


(1)需給動向

 2014年1月の大阪圏の空室率は0.5%となり、前期(13年10月)の0.7%から更に0.2ポイント改善し、空室在庫はほとんどない(図表5参照)。詳細にみると、楽天向けの専用施設である「プロロジスパーク川西」が2013年11月に竣工し(*10) 、同年12月にBTS型施設として「プロロジスパーク神戸」も竣工した(*11)。

 大阪圏では逼迫した需給環境を背景に新規開発が活発であるが、2014年中の新規稼働は「グッドマン堺」「SGリアルティ舞洲」「三井不動産ロジスティクスパーク堺」の3棟のみで、当面は需給悪化の懸念は小さいが、2015年以降も「プロロジスパーク大阪5」や「GLP鳴尾浜」などの新規稼働が相次ぐ見込みである。
 また、物流施設が開発可能な用地情報は増えており「フェニックス事業用地(*12)」「彩都(*13)」「箕面森町(*14)」「夢洲地区(*15)」などが開発候補地となりうる。そのほか、パナソニックプラズマディスプレイの尼崎工場(*16)やパナソニック液晶ディスプレイの茨木事業所(*17)でも物流施設への転用の動きがある。加えて、大阪府都市開発株式会社(OTK)の株式は、南海電気鉄道に売却される方針で大阪府議会との調整が進められている。OTKが運営する東大阪トラックターミナル(1968年開業)や北大阪トラックターミナル(1974年開業)などのゆくえが注目される。

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出所:株式会社一五不動産情報サービス

10.2013年11月22日付 プロロジス プレスリリースより。
11.2013年12月11日付 プロロジス プレスリリースより。
12.http://www.hyogo-kobe.jp/his/modules/xxxxx/detail.php?id=75
13.http://www.saito.tv/central/outline/index.html
14.http://www.pref.osaka.lg.jp/minoh/kigyou
15.http://www.investosaka.jp/development/yumeshima.html ※産業・物流ゾーンは順次入札が進められている。
16.2014年1月28日付 日本経済新聞より。
17.2014年2月18日付 産経新聞より。


(2)賃料動向

 2014年1月の大阪圏の募集賃料は3,210円/坪で、前期の3,200円/坪から10円/坪(プラス0.3%)の上昇となった。大阪圏の募集賃料は概ね横ばいであるが、実勢の賃料相場は緩やかに上向いている。上述の通り、需給環境は良好であることから、今後、募集賃料も上昇に向かうことが期待される。

20140303_市況_図表6大阪圏の募集賃料の動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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