物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2020年1月時点)

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【東京圏】

・今期(20年1月)の空室率は1.9%となり、前期の2.6%から0.7ポイントの低下となった。今期(19年11月~20年1月)は新規供給が24.7万㎡と前期の4分の1と少なく、需給改善がさらに進み、空室率は2015年10月の1.9%から約4年ぶりに2%を下回った。
・東京圏の募集賃料は4,370円/坪で、前期の4,280円/坪から90円/坪(プラス2.1%)の上昇となった。東京圏の募集賃料の上昇は2四半期連続で上昇機運が高まっており、神奈川県に限定した募集賃料では、2008年7月の調査開始以降で最も高い4,800円/坪となった。

【関西圏】

・今期(20年1月)の空室率は2.8%で、前期の3.2%から0.4ポイントの低下となり2017年10月から2年以上にわたり需給改善が続いている。
・関西圏の募集賃料は3,720円/坪となり、前期の3,560円/坪から160円/坪(プラス4.5%)の大幅な上昇となった。関西圏の募集賃料は、前期は下落したものの、2017年7月の3,310円/坪を底に上昇トレンドが持続している。


1. 東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

 2020年1月の東京圏の空室率は1.9%となり、前期の2.6%から0.7ポイントの低下となった(図表1参照)。今期(19年11月~20年1月)は新規供給が24.7万㎡と前期の約4分の1と少なく、需給改善がさらに進み、空室率は2015年10月の1.9%から約4年ぶりに2%を下回った。
 具体的にみると、東急不動産による「LOGI’Q三芳」(*1)、ESRによる「ESR守谷ディストリビューションセンター」(*2)、三菱商事都市開発による「MCUD八千代」(*3)、東急不動産による「LOGI’Q白岡」および「LOGI’Q習志野」(*4)ほか計6棟が新たに竣工し、うち5棟が満室稼働であった。
 また、今後の開発では、シーアールイーによる「ロジスクエア三芳Ⅱ」の着工(*3)、三井不動産による「MFLP八千代勝田台」、「MFLP所沢」および「MFLP海老名」の開発(*4)、日本GLPによる「GLP八千代Ⅲ」の着工、「GLP ALFALINK相模原」の開発および「GLP北本」の開発(*5)、ロジランドによる「LOGILAND 羽生BASE」の開発(*6)、三井物産都市開発による「LOGIBASE 新狭山」の着工(*7)、大和ハウス工業による「DPL草加」の着工(*8)、KICアセット・マネジメントによる「KIC越谷ディストリビューションセンター」および「KIC厚木ディストリビューションセンター」の開発(*9)が相次ぎ発表された。
 物流施設の開発は巨大化しているが、2020年中に竣工する開発計画に限れば、延床面積で20万㎡を上回るような超巨大な開発計画はない。マルチテナント型物流施設のプレリーシングも順調であることから、当面は需給悪化に陥る懸念は小さい。

202001_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

202001_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2020年1月29日付 東急不動産(株) プレスリリースより
2.2020年2月12日付 ESR(株) プレスリリースより
3.2019年11月1日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
4.2019年11月5日付 三井不動産(株) プレスリリースより
5.2019年11月7日付、11月25日付、12月24日付 日本GLP(株) プレスリリースより
6.2019年11月21日付 (株)ロジランド プレスリリースより
7.2019年12月2日付 三井物産都市開発(株) プレスリリースより
8.2019年12月4日付 大和ハウス工業(株) プレスリリースより
9.2019年12月9日付、2020年1月10日付 KICアセット・マネジメント(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

 2020年1月の東京圏の募集賃料は4,370円/坪で、前期の4,280円/坪から90円/坪(プラス2.1%)の上昇となった。東京圏の募集賃料の上昇は2四半期連続で上昇機運が高まっており、神奈川県に限定した募集賃料では2008年7月の調査開始以降で最も高い4,800円/坪となった。

202001_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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2. 関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
 2020年1月の関西圏の空室率は2.8%で、前期の3.2%から0.4ポイントの低下となり、2017年10月からの2年以上にわたり需給改善が続いている(図表4参照)。また、今期(19年11月~20年1月)は新規供給が10.8万㎡に対し、新規需要は堅調で13.2万㎡となり、さらなる需給改善に繋がった。
 具体的にみると、今期(19年11月~20年1月)は、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT尼崎Ⅰ」(*10)、オリックスによる「枚方Ⅱロジスティクスセンター」(*11)など3棟が新たに竣工し、うち2棟が満室稼働であった。また、竣工前のリーシングでは、プロロジスによる「プロロジスパーク神戸5」で三菱食品との賃貸借契約の締結が発表された(*12)。
 今後の開発では、三井不動産による「MFLP大阪交野」の開発(*13)、プロロジスによる「プロロジスパーク猪名川2」の開発と「プロロジスパーク神戸5」の着工(*14)、シーアールイーによる「ロジスクエア大阪交野」の着工(*15)、三菱商事都市開発による兵庫県神戸市での開発用地取得(*16)、日鉄興和不動産による「LOGIFRONT尼崎Ⅱ」の着工(*17)、日本GLPによる「GLP野洲」の着工(*18)、センターポイント・ディベロップメント、東急不動産および三菱UFJリースによる「CPD枚方」の着工(*19)が相次ぎ発表された。関西圏では2020年上半期に竣工する物件は入居テナントが確定したBTS型物流施設が大半であることから、空室率はさらに低下する見込みである。2020年6月末に延床面積が40万㎡近いESR尼崎ディストリビューションセンターの竣工を控えるため、その段階では一時的な空室率な上昇が見込まれるが、全般的な需給環境は安定的に推移することが見込まれる。


202001_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

202001_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:図表5の数値の一部に誤りがあり訂正しました(2020年3月2日に訂正)。

10.2020年2月5日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
11.2020年2月27日付 オリックス(株) プレスリリースより
12.2020年1月15日付 プロロジス プレスリリースより
13.2019年11月5日付 三井不動産(株) プレスリリースより
14.2019年11月18日付、2020年1月15日付 プロロジス プレスリリースより
15.2019年11月19日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
16.2020年1月15日付 三菱商事都市開発(株) プレスリリースより
17.2019年11月28日付 日鉄興和不動産(株) プレスリリースより
18.2020年1月30日付 日本GLP(株) プレスリリースより
19.2020年1月31日付 (株)センターポイント・ディベロップメント、東急不動産(株)、三菱UFJリース(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
 2020年1月の関西圏の募集賃料は3,720円/坪で、前期の3,560円/坪から160円/坪(プラス4.5%)の大幅な上昇となった。関西圏の募集賃料は2017年7月の3,310円/坪を底に上昇トレンドが持続している。

202001_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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3. 追記事項 ~新型コロナウィルスの影響~

 新型コロナウィルスに関する記事が日本経済新聞(朝刊)の一面になったのは1月24日で、その後はテレビやインターネットなどもこのニュース一色で、日本政府からの大規模イベントの中止や延期の要請に加え、小中高への休校要請にまで至り、日本経済がマイナス成長に陥るのは避けがたい情勢である。

 上述の通り、2020年1月時点の物流施設の賃貸市況は良好であるが、日本経済の悪化が不動産市場に影響を及ぼすことは避けられないだろう。新型コロナウィルスによる自粛ムードが更に拡散すれば、物流分野を含む投資マインドが低下し、新規拠点の開設など設備投資が滞るリスクが高まる。
 他方、物流施設の不動産市況の中期的な見通しについて、弊社は楽観視している。その最大の理由は、物流施設への需要拡大が景気循環ではなく構造的な変化によってもたらされているからである。高機能型物流施設に対する需要拡大は、Eコマースの隆盛、雇用面への配慮やBCPへの対応などに支えられている。仮に景気悪化したとしても、実店舗からEコマースへの移行の流れは不変で、人口減少に起因する労働力不足は容易には解消せず、雇用面に配慮された高機能型物流施設の高い評価は変わらない。また、多発する自然災害への対応も高機能型物流施設に対するシフトを後押しするだろう。
 風が吹けば桶屋が儲かるということわざがある通り、経済の連関は複雑なので、今後の経済動向は予断を許さないが、こと物流分野に関しては過度な悲観論に陥るのは避けた方が良いと判断している。

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