物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2017年10月時点)

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【東京圏】

今期(17年10月)の空室率は5.2%となり、前期の4.9%から0.3ポイントの上昇となった。今期の新規供給は25.3万㎡に対し新規需要は19.9万㎡で、概ね安定した需給環境である。
東京圏の募集賃料は4,200円/坪で、前期の4,280円/坪から80円/坪(マイナス1.9%)の下落となった。東京圏の募集賃料は2016年7月より4四半期連続で上昇していたが、今期で下落に転じた。

【関西圏】

今期(17年10月)の空室率は12.9%となり、前期の10.4%から2.5ポイントの上昇となった。超大型クラスの物流施設の新規稼働が相次ぎ、新規供給は過去最大の68.8万㎡に達したが、新規需要も48.8万㎡と堅調で、空室率の上昇は小幅に留まった。
関西圏の募集賃料は3,350円/坪となり、前期の3,310円/坪から40円/坪(プラス1.2%)の上昇となった。関西圏の募集賃料は3四半期連続で下落していたが、今期で僅かに反転した。


東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2017年10月の東京圏の空室率は5.2%となり、前期の4.9%から0.3ポイントの上昇となった(図表1参照)。今期(17年8月~10月)の新規供給は25.3万㎡に対し新規需要は19.9万㎡で、概ね安定した需給環境である(図表2参照)。
具体的にみると、住友商事による「SOSiLA横浜港北」ほか計3棟が新たに竣工した。また、竣工前のリーシングも順調で2018年1月竣工予定の「グッドマンビジネスパークサウス」の成約率が50%となり(*1)、シーアールイーによる「ロジスクエア春日部」もコイズミ物流と賃貸借予約契約を締結した(*2)。そのほか、野村不動産による「Landport青梅Ⅰ」が着工し日野自動車が一棟借りすることも発表された(*3)。

今後の開発計画の活発で、三菱地所による「ロジクロス横浜港北」の開発(*4)、プロロジスによる「プロロジスパーク千葉」の開発(*5)、日本ロジスティクスファンド投資法人による「八千代物流センターⅢ」の開発後の取得(*6)、オリックスによる「厚木Ⅱロジスティクスセンター」と「松伏ロジスティクスセンター」の開発(*7)、SGリアルティとIHIが共同で東京都江東区新砂において大型物流施設を開発(*8)、CPDによる「CPD松戸物流センター」の着工(*9)などが相次いで発表された。

図表1,2に示す通り、2016年1月以降の東京圏の需給動向は概ね安定的に推移してきたが、2018年は250万㎡前後の大量供給が見込まれており、過去最大であった2016年の約180万㎡の大きく上回ることから供給過剰に陥る懸念は強い。他方、各機関から発表される日本経済の見通しは上方修正されるケースが増え、物流分野でも国際航空貨物の増加基調が鮮明になり(*10)、国内の荷動きも復調している(*11)。東京圏では大量供給による需給バランスの緩和は避けがたいが、堅調なニーズを背景に空室率の上昇ペースは緩やかになると弊社では予測している。

201710_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

201710_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2017年10月12日付 グッドマンジャパン(株) プレスリリースより
2.2017年10月25日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
3.2017年10月24日付 野村不動産(株) プレスリリースより
4.2017年9月4日付 三菱地所(株) プレスリリースより
5.2017年9月11日付 プロロジス プレスリリースより
6.2017年9月11日付 日本ロジスティクスファンド投資法人 プレスリリースより
7.2017年9月25日、10月26日付 オリックス(株) プレスリリースより
8.2017年10月27日付 SGリアルティ(株)、(株)IHI、佐川急便(株) プレスリリースより
9.2017年11月1日付 三菱UFJリース(株)、(株)センターポイント・ディベロップメント プレスリリースより
10.一般社団法人航空貨物運送協会発表の航空貨物取扱実績によれば、2017年10月の輸出は前年同月比で15%増、輸入も19%増で、特に中国向けが堅調である。景気回復局面では、高い輸送コストを負担してでも短時間に輸送できる航空貨物の取扱いが増える傾向にある。
11.国土交通省発表のトラック輸送情報によれば、特別積合せ貨物の輸送量は2016年11月以降、前年同月比でプラスが続いている。また、ネット通販の追い風を受ける宅配便貨物の取り扱い個数は更に堅調で、この1年間は前年同月比でプラス10%前後の推移となっている。


(2)賃料動向

2017年10月の東京圏の募集賃料は4,200円/坪で、前期の4,280円/坪から80円/坪(マイナス1.9%)の下落となった。東京圏の募集賃料は2016年7月より4四半期連続で上昇していたが、今期で下落に転じた。
2018年以降は需給緩和局面に移行することが見込まれるため、東京圏全体の募集賃料は上値が重い展開が続くことが予想される。

201710_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2017年10月の関西圏の空室率は12.9%となり、前期の10.4%から2.5ポイントの上昇となった(図表4参照)。今期(17年8月~10月)において、アスクル向けの専用物流施設である「GLP吹田」(*12)、大和ハウス工業によるヤマトグループ専用の「Dプロジェクト茨木」(*13)、三井不動産による「MFLP茨木」(*14)がそれぞれ竣工した。また、パナソニックのPDP第5工場を改修したセンターポイント・ディベロップメントによる「CPD尼崎流通センター」も今期から組み入れた。超大型クラスの物流施設の新規稼働が相次ぎ、新規供給は過去最大の68.8万㎡に達したが、新規需要も48.8万㎡と堅調で、空室率の上昇は小幅に留まった(図表4,5参照)。
今後の開発では、グッドマンジャパンによる「グッドマン赤松台2」の開発(*15)、プロロジスによる「プロロジスパーク神戸4」の開発(*15)が発表された。
関西圏では湾岸・内陸とも新規開発が盛んであるが、内陸部ではプレリーシングが順調な案件が多く、今後も安定した需給環境となる見通しである。他方、湾岸部では空室消化に時間を要しており、今後も開発物件が相次ぐことから需給緩和が長引くことが懸念される。


201710_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

201710_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス

12.2017年9月7日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株)、アスクル(株) プレスリリースより
13.2017年10月5日付 ヤマトホールディングス(株) プレスリリースより
14.2017年10月10日付 新日鉄住金エンジニアリング(株) プレスリリースより
15.2017年10月12日付 グッドマンジャパン(株) プレスリリースより
16.2017年10月18日付 プロロジス プレスリリースより


(2)賃料動向
2017年10月の関西圏の募集賃料は3,350円/坪で、前期の3,310円/坪から40円/坪(プラス1.2%)の上昇となった。関西圏の募集賃料は3四半期連続で下落していたが、今期で僅かに反転した。
内陸部は安定した需給環境で賃料相場も落ち着いている。他方、湾岸部では物件毎の格差が拡大傾向で、雇用面で優位性があるなど市場競争力の高い物件では賃料水準は落ち着いているが、競合物件との差別化が難しい物件では賃料水準は弱含みである。

201710_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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