物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2016年7月時点)

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【東京圏】

今期(16年7月)の空室率は4.4%となり、前期の4.6%から0.2ポイント低下した。今期は新たに9棟が竣工し新規供給は47.3万㎡と比較的高い水準となった。また、新規需要も堅調で新規供給を若干上回る48.1万㎡となり2四半期連続での需給改善となった。
東京圏の募集賃料は4,000円/坪で、前期から横ばいとなった。2013年1月の3,800円/坪を底に募集賃料の上昇が続き、2014年7月以降は概ね4,000円/坪前後で推移している。

【関西圏】

今期(16年7月)の空室率は3.6%となり、前期の1.4%から2.2ポイント上昇した。今期の新規供給は21.9万㎡となり調査開始以来で最大となった。他方、新規需要は14.1万㎡で新規供給の6割強の水準に留まった。
関西圏の募集賃料は3,390円/坪となり、前期から横ばいとなった。関西圏の募集賃料は2015年7月の3,560円/坪をピークに3四半期連続で下落していたが、今期で下げ止まった。

東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2016年7月の東京圏の空室率は4.4%となり、前期(16年4月)の4.6%から0.2ポイント低下した(図表1参照)。今期(16年5月~7月)は新たに9棟が竣工し新規供給は47.3万㎡と比較的高い水準となり、新規需要も堅調で新規供給を若干上回る48.1万㎡となった(図表2参照)。また、今期はテナントが確定しているBTS型物流施設の竣工が多かったことに加え、複数のマルチテナント型物流施設で稼働率が向上したことで、2四半期連続での需給改善となった。

具体的にみると、オリックスは「市川塩浜ロジスティクスセンター」においてディーエイチシーとの賃貸借契約の締結を発表(*1)、プロロジスは「プロロジスパーク千葉ニュータウン」の竣工式の挙行、「プロロジスパーク習志野5」で大手3PL企業の賃貸契約の締結を発表した(*2)。また、ラサール不動産投資顧問はトナミ運輸向けの「ロジポート平塚新町」の竣工(*3)、シーアールイーによる「ロジスクエア久喜」はインテリア業界大手のサンゲツの物流拠点として稼働し、「ロジスクエア羽生」には国内大手物流企業が入居する(*4)。そのほかGLPによる「GLP厚木Ⅱ」が竣工し、イオングローバルSCMとUDLの入居で満床、2015年12月竣工の「GLP八千代」も満床となった(*5)。東京圏では新規供給によって潜在的な需要を喚起される好循環が続いており、足下の需給環境は安定している。今後の開発計画でも、メープルツリー インベストメンツ ジャパンの開発拠点に、ブレインウェーブが「はぴロジGARB」を開設(*6)するなどプレリーシングが順調に進んでいる。他方、ESR(e-Shang Redwood)が川崎区東扇島で開発用地14万㎡を取得し、賃貸面積が最大で56万㎡の大規模物流施設(3棟)を段階的に開発する(*7)など、大規模物流施設の開発計画が次々と発表されている。東京圏では堅調なニーズが期待できるものの、需要を大きく上回る供給水準となる懸念もあり、空室率の上昇圧力が徐々に強まりそうだ。

201607_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

201607_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2016年5月10日付 オリックス(株) プレスリリースより
2.2016年5月26日/7月25日付 プロロジス プレスリリースより
3.2016年6月2日付 ラサール不動産投資顧問(株) プレスリリースより
4.2016年6月16日/7月19日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
5.2016年6月20日/8月16日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより
6.2016年8月25日付 (株)ブレインウェーブ プレスリリースより
7.2016年7月6日付 ESR(e-Shang Redwood) プレスリリースより


(2)賃料動向

2016年7月の東京圏の募集賃料は4,000円/坪で、前期から横ばいとなった。東京圏では2013年1月の3,800円/坪を底に募集賃料の上昇が続き、2014年7月以降は概ね4,000円/坪前後で推移している。
上述の通り、東京圏では高機能型物流施設に対する引き合いは堅調で、既存物件の空室消化も概ね順調である。そのため、新規開発が活発なうえ、開発エリアも広域化している。東京圏全体の募集賃料は上がりにくい市場環境が続きそうだ。

201607_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向

2016年7月の関西圏の空室率は3.6%となり、前期の1.4%から2.2ポイントの上昇となった(図表4参照)。今期(16年5月~7月)の新規供給は21.9万㎡で、2008年7月の調査開始以来で最大となった。また、新規需要は14.1万㎡で、新規供給の6割強の水準に留まったため、需給バランスの緩和に繋がった(図表5参照)。

具体的にみると、三井物産リアルティ・マネジメントによる「六甲アイランド物流センター」が竣工 、住友商事による「SOSiLA大阪西淀川Ⅰ」が竣工(*9)、伊藤忠商事とMapletree Groupの共同開発である「アイ ミッションズ パーク 堺」が竣工した(*10)。
新規開発の発表も続いており、ラサール不動産投資顧問と三菱地所は「ロジポート大阪大正」を共同開発(*11)、GLPはマルチテナント型物流施設である「GLP枚方Ⅲ」と「GLP神戸西Ⅱ」の開発、アスクル専用の「GLP吹田」の着工を発表した(*12)。
また関西圏では新名神高速道路の整備に合わせ、土地区画整理事業や産業団地の造成が相次いでいる。好立地での物流用地が増える見込みで、中長期にわたり物流施設の大量供給が続きそうだ。


201607_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

201607_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス

8.2015年1月23日付 三井物産リアルティ・マネジメント(株) プレスリリースおよび現地調査より
9.住友商事の物流施設:SOSiLA(ソシラ)のウェブサイトより
10.2016年8月1日付 伊藤忠商事(株) プレスリリースより
11.2016年8月3日付 ラサール不動産投資顧問(株)/三菱地所(株) プレスリリースより
12.2016年5月31日/6月7日/7月8日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2016年7月の関西圏の募集賃料は3,390円/坪で、前期から横ばいとなった。関西圏の募集賃料は2015年7月の3,560円/坪をピークに3四半期連続で下落していたが、今期で下げ止まった。
周知のとおり、関西圏ではこれから大量供給を迎える。上述の通り、物流用地の供給に繋がる土地区画整理事業や産業団地の造成が相次いでいる。そのため、大量供給の収束時期が見えにくく、関西圏全体の募集賃料は上値が重い展開が続きそうだ。

201607_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向

出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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