物流施設の賃貸マーケットに関する調査(2017年7月時点)

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【東京圏】
今期(17年7月)の空室率は4.8%となり、2016年1月から1年半にわたって5%前後で推移している。今期の新規供給は29.1万㎡に対し新規需要は26.7万㎡で、概ね均衡した需給バランスとなった。
東京圏の募集賃料は4,280円/坪で、前期の4,260円/坪から20円/坪(プラス0.5%)の上昇となった。東京圏の募集賃料は4四半期連続の上昇で、地域や物件によって市場競争力の格差が開きつつある。

【関西圏】
今期(17年7月)の空室率は10.4%となり、前期の11.7%から1.3ポイントの低下となった。今期の新規供給は13.4万㎡に対し、新規需要は17.8万㎡で1年半ぶりの需給改善となった。
関西圏の募集賃料は3,310円/坪となり、前期の3,350円/坪から40円/坪(マイナス1.2%)の下落となった。関西圏の募集賃料は3四半期連続の下落となり、特に湾岸地区で賃料水準が弱含みである。


東京圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2017年7月の東京圏の空室率は4.8%となり、2016年1月から1年半にわたって5%前後で推移している(図表1参照)。また、今期(17年5月~7月)の新規供給は29.1万㎡に対し、新規需要は26.7万㎡で、概ね均衡した需給バランスであった(図表2参照)。

具体的にみると、シーアールイーによる「ロジスクエア守谷」(*1)、大和ハウス工業による「DPL川崎夜光」などが相次ぎ竣工した。また、マルチテナント型の初の建替えとなる東京流通センターによる「物流ビルB棟」も2017年6月に竣工した(*2)。またプレリーシングも順調で、2017年12月竣工予定の「プロロジスパーク市川3」は竣工前に満床となった(*3)。

底堅い需要を背景に、新規開発の動きは依然として盛んで、日本生命保険による神奈川県大和市での大型物流施設の開発(*4)、プロロジスによる「プロロジスパークつくば1」と「プロロジスパーク古河3」の着工(*5)、シーアールイーによる「ロジスクエア川越」と「ロジスクエア春日部」の着工(*6)、三井不動産による「MFLPつくば」、「MFLP川口Ⅰ」、「MFLP船橋Ⅱ,Ⅲ」、「MFLP羽田」および「MFLP川崎Ⅰ」の開発(*7)、ラサール不動産投資顧問による「関東運輸狭山物流センター」と「日本通運柏沼南物流センター」の着工(*8)、GLPによる「GLP新座」の開発(*9)などが相次いで発表された。

2017年下半期における竣工予定物件はBTS型が多く、マルチテナント型もリーシングが順調であることから2017年中は安定した需給環境が続きそうだ。他方、2018年は約270万㎡の大量供給が見込まれており、過去最大の新規供給であった2016年(約180万㎡)の1.5倍のボリュームとなることから、2018年以降は空室率が上昇に向かう見通しである。

201707_市況_図表1 東京圏の空室率の動向

201707_市況_図表2 東京圏の需給バランスの動向
出所:株式会社一五不動産情報サービス

1.2017年5月31日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
2.2017年6月30日付 (株)東京流通センター プレスリリースより
3.2017年8月9日付 プロロジス プレスリリースより
4.2017年6月21日付 日本生命保険相互会社 プレスリリースより
5.2017年6月29日、7月6日、8月9日付 プロロジス プレスリリースより
6.2017年6月30日、7月12日付 (株)シーアールイー プレスリリースより
7.2017年7月20日付 三井不動産(株) プレスリリースより
8.2017年7月28日、7月31日付 ラサール不動産投資顧問(株) プレスリリースより
9.2017年8月9日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより


(2)賃料動向

2017年7月の東京圏の募集賃料は4,280円/坪で、前期の4,260円/坪から20円/坪(プラス0.5%)の上昇となった。東京圏全体の募集賃料は4四半期連続の上昇であるが、地域や物件によって市場競争力の格差が開きつつある。
地域別でみると、湾岸部は総じて賃料水準が安定的で、神奈川方面では2017年3月に開通した首都高速横浜北線「横浜港北JCT~生麦JCT」、2021年度に開通予定(2020年目標)の首都高速横浜環状北西線「横浜青葉JCT~横浜港北JCT」、千葉方面では東京外環自動車道「三郷南IC~高谷JCT」が2017年度の開通予定で、これらの道路インフラの整備が立地ポテンシャルの向上を後押ししている。
また、物流現場における喫緊の課題は労働力の確保であり、駅近など雇用面で明確な優位性がある物件はエリアを問わず引き合いは強い。上述の通り、東京圏では2018年以降に大量供給を控えるが、強みを有する新規開発物件には堅調なニーズが期待でき、賃料水準も底堅く推移すると考えられる。

201707_市況_図表3 東京圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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関西圏の賃貸マーケット動向

(1)需給動向
2017年7月の関西圏の空室率は10.4%となり、前期の11.7%から1.3ポイントの低下となった(図表4参照)。今期(17年5月~7月)の新規供給は13.4万㎡に対して新規需要は17.8万㎡となり、1年半ぶりの需給改善となった(図表5参照)。今期は新たに3棟が竣工しており、三菱地所によるさとうグループ専用のBTS型施設である「ロジクロス神戸三田」(*10)、グッドマンジャパンによる丸紅ロジスティクス専用の「グッドマン赤松台」(*11)が相次いで稼働し、野村不動産による「Landport高槻」も2017年6月末に竣工し、既に複数テナントと契約が進んでいる(*12)。そのほか、最近竣工したマルチテナント型物流施設でも稼働率が上昇したことが、空室率の改善に繋がった。
今後の開発では、プロロジスによる「プロロジス猪名川プロジェクト」の着工および「プロロジスパーク門真」の開発(*13)、GLPによる「GLP寝屋川」の着工(*14)、三井不動産による「MFLP大阪Ⅰ」の開発(*15)、三井物産都市開発と三菱地所の共同開発となる「大阪西淀川物流センター」(*16)が相次いで発表された。
関西圏でも大手ネット通販による大規模拠点の開設がみられるなど需要自体は底堅いが、それを大きく上回る新規供給が見込まれている。そのため、今期における需給改善は一時的で、2017年下半期以降の空室率は再び上昇に向かう見通しである。
また、ディベロッパーによる物流施設の開発だけでなく、物流施設の用地供給に繋がる土地区画整理事業も多い。そのため、物流施設の新規供給が収束しはじめる時期は不明で、現段階で需給バランスが改善に向かう時期も予測することは難しい。


201707_市況_図表4 関西圏の空室率の動向

201707_市況_図表5 関西圏の需給バランスの動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス

10.2017年7月6日付 三菱地所(株) プレスリリースより
11.2017年7月7日付 丸紅ロジスティクス(株) プレスリリースより
12.2017年7月4日付 野村不動産(株) プレスリリースより
13.2017年6月16日、8月1日付 プロロジス プレスリリースより
14.2017年7月6日付 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(株) プレスリリースより
15.2017年7月20日付 三井不動産(株) プレスリリースより
16.2017年7月24日付 三菱地所(株) プレスリリースより


(2)賃料動向
 2017年7月の関西圏の募集賃料は3,310円/坪で、前期の3,350円/坪から40円/坪(マイナス1.2%)の下落となった。関西圏の募集賃料は3四半期連続の下落となり、特に湾岸地区で賃料水準が弱含みである。上述の通り、関西圏の需給バランスは更に緩和する見通しで、一部物件には交渉賃料を引き下げる動きもあり、厳しい需給環境が賃料水準に影響している。なお、関西圏でも労働力が確保しやすいなど、その他物件と差別化が可能な物件では底堅い需要が期待でき、賃料水準も安定的に推移すると考えられる。

201707_市況_図表6 関西圏の募集賃料の動向 出所:株式会社一五不動産情報サービス
注:Nはサンプル数を示す。点線は各期の賃料サンプルのうち、上位10%と下位10%を結んだもので、賃料サンプルのバラつき具合を示す。

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